——ルーシー、まさかの褒め言葉
「あ、あんただって……あんなスゴイ魔物を手懐けてるじゃないの! むしろ、あんたの方がスゴイんじゃないの!」
ルーシーは少しムキになりながらも、頬をほんのり赤らめて、思わず褒め言葉を口にした。すると、レティアが人懐っこい仕草でルーシーの顔を覗き込みながら、小さく囁いた。「あのね、ルーシーが呼んでくれるなら、わたしも“レティー”って呼んでくれると嬉しいかなぁ……」
「は? 私たち、さっき出会ったばっかりじゃない! そんな仲じゃないでしょ!」
ルーシーは一瞬険しい表情を浮かべるも、レティアの無邪気な視線に圧倒され、結局はため息ひとつ。「……あんたがどうしてもっていうなら……仕方ないわね、れ、レティー。」その言葉にレティアは嬉しそうに手を叩いて笑い、ルーシーの反応をしばらく楽しむようにじっと見つめていた。
「な、なに見てんのよ! あんたなんかに構われたくないんだからね!」
ルーシーは強い口調で言い放ちながらも、どこか照れくさそうに顔を逸らした。レティアはまったく動じることなく、にっこり笑顔で返す。 「うふふ、そんなに怒らなくてもいいのに。お友達になろうよ!」その無邪気な言葉に、ルーシーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにため息をついて。「もお、仕方ないわね。レティーがそこまで言うなら……べつに良いわよ。お友だちかぁ……」
そう言いながら、ルーシーはふと微笑んだ。その笑顔はとても可愛らしく、思わずこちらまで笑顔になってしまうような魅力を感じさせた。「うん。おともだちぃ〜」
レティアが小さく、しかし確かな響きで呟いたその言葉は、隣に座っていたルーシーの耳にしっかり届いていた。レティアは嬉しさのあまり、ぴょこんと立ち上がると、ルーシーの腕にそっと自分の手を重ねた。ルーシーはビクッと体を震わせ、反射的に腕を引こうとする。
「は? え!? ちょ、ちょっと、なにしてるのよ!?」
ルーシーは顔を赤くして、慌てたようにレティアから顔を逸らした。その声には明らかに動揺が混じっている。レティアは、そんなルーシーの様子を気にする素振りも見せず、ルーシーの腕を優しく撫でるように、指先でくすぐった。「ふふっ、ルーシー、あったかいねー。お友達になった記念だよぉ♪」
レティアは満面の笑みでそう言うと、ルーシーの顔を覗き込もうとした。しかし、ルーシーはくるりと完全に背を向け、顔を見られないようにする。「う、うるさいわよっ。喜んでなんかいないんだからね! ふんっ」
ルーシーはそう言い放ったが、レティアには見えないその横顔は、ほんのり赤く染まり、口元には隠しきれない柔らかな笑みが浮かんでいた。そっぽを向きながらも、ちらちらとレティアを気にする様子を隠しきれなかった。 ——明かされる本音「ルーシーは、冒険者さんなんだよね? パーティとかいるのかなぁ?」
レティアは気になったことをそのまま口にした。もしパーティがいるなら、一緒にいられる時間が少なくなってしまうかもしれない――そんな思いが心の中にあった。「……いないわよ。必要ないもの。わたし一人が好きなの。自由で良いじゃない……好きなところに行って、好きなことをするのよ!」
ルーシーは自信を持って答えたものの、その声にはどこか寂しげな響きがあった。「そっかぁ……。一人が好きなんだ……」
レティアは少し残念そうに呟いた。その言葉に、ルーシーは慌てたように顔を赤らめながら否定する。 「え!? あ、違うの。そうじゃなくて……その、はぁ……。わたし、こんなムスッとした顔をしているし、照れ隠しで怒ったような口調になっちゃってパーティに入れてもらえないのよ。それに駆け出しの冒険者だし……」 ルーシーは地面を見つめながら、ぽつぽつと本音を語り始めた。「そうなんだ! えへへ。じゃあ……ずっと一緒にいられるんだ!? それって……すてきぃ♪」
レティアはにぱぁっと笑顔を浮かべ、心から喜びを表した。その純粋な反応に、ルーシーは驚いた表情を浮かべる。「はぁ? そんなに……わたしと一緒にいたいの? 一緒にいても不快にさせるだけだと思うけど?」
ルーシーは戸惑いながらも、どこか嬉しそうな気配を隠しきれなかった。その瞬間、ルーシーの胸には今まで感じたことのない温かさが広がり、次第に彼女はレティアに心を開き始めた。ルーシーの険しい表情が少しずつ柔らかくなり、笑顔がこぼれるたび、レティアとの絆が深まっていった。
——ノクスたちの食事事情「ね、ねぇ。ルーシーは狩りをしていたんだよね? わたしも、オオカミさんのご飯を取らないと……さっきお腹を空かせていたんだったぁ。」
レティアはじっと座り、待機状態のノクスたちを見つめながら思い出したように話しかけた。「……放っておけば、勝手に自分たちで狩りをして食べるんじゃないの? あれ、かなり強いのよ?」
ルーシーは顔を引き攣らせながら答えた。彼女の視線はノクスたちに向けられており、その鋭い目つきには警戒心が滲んでいた。「そうなの? 可愛らしいワンちゃんみたいだけど……? 撫でるとね、『くぅーん』ってかわいい声で鳴くんだよぅ♪」
レティアは無邪気な笑顔でルーシーに教えてあげた。その言葉に、ルーシーは思わず声を荒げる。「……あんたの可愛い基準がおかしいってっ。あれは、どう見ても恐怖そのものよ。」
フィオもその言葉に続けて、レティアの提案に乗るように明るく答えた。「うん。それでいいよ。久しぶりの魔法を頑張っちゃおーっと! フルーツタルトのためね♪」 その無邪気な言葉に、フィオがだんだんとレティアに似てきている様子が伺えた。 ジェレミーは控えめに言葉を紡ぎながらも、目にはすでにやる気が燃え上がっているのが見えた。「それは助かりますね。復帰後の第一戦目ですし……ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」♢討伐開始とルーシー、フィオの目標「さっ。始めるよぅ〜♪」 その声と同時にレティアの姿がスッと消えたかと思うと、『ドサッ!……ドサッ!』という重量のあるものが地面に倒れる音が森全体に響き渡る。音の正体は討伐された魔物だった。 一方、その勢いに触発されたルーシーも剣を構えながら、二人に声をかけた。「……れ、レティーに負けてられないわね。行くわよ!」 彼女の顔には闘志が宿り、その言葉には仲間たちを奮い立たせようとする力が感じられた。 そんなルーシーの姿を見て、フィオは少し微笑みながら問いかけた。「ルーシーは、何か食べたいものあるの?」 ルーシーはふと考え込み、少し照れたような笑顔を浮かべて答えた。「ぱ、パフェとか食べてみたいかなぁ……ケーキも食べてみたいし……まっ、無理しない程度に頑張ろ。」 彼女もまた、完全にレティアのペースに乗せられている様子だった。♢レティアの進化する討伐スタイル その頃、レティアは体を動かすために虹色の能力でラクに魔物を倒すのではなく、自分で虹色の能力を活かして剣を作り出して戦いに挑んでいた。「るんっ♪ るーんっ♪ みーつけたぁ♪ えいっ♪ とぉーうっ!」 彼女の軽快な声が響く中、手元に輝く虹色の剣が魔物を次々と切り裂いていく。剣が振られるたびに空中に鮮やかな光
フィオが恐る恐る呟く。その視線はノクスの銀色に輝く瞳と鋭利な牙に向けられていた。彼女の背筋には冷たい汗が流れている。 一方のジェレミーも微笑みを浮かべる余裕などなく、強張った表情で呟いた。彼の声は震え、その驚きを隠しきれない。「信じられません……このような存在が懐いているとは……。」 ルーシーは怯えるフィオとジェレミーに目をやり、軽く肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。「慣れればかわいいと思えるかもよ。ほら、レティーはあんなに余裕で接してるでしょ? まあ……わたしにはムリだけどね。あはは……。」 その軽妙な言葉が少し場の空気を和らげるように響いたが、ノクスとシャドウパピーズの圧倒的な存在感は、まだフィオとジェレミーの背筋を硬直させたままだった。だが、その緊張の中でもレティアは天真爛漫な笑顔を浮かべ、ノクスの巨大な頭を何のためらいもなく撫でていた。 怯えるフィオとジェレミーを横目に、ルーシーは再び苦笑いしながら呟いた。「ほんと、レティーって……すごい子よね。」♢受け入れの兆しと獲物への不満 こうして少しずつ場が落ち着き始める中、レティアの柔らかい態度が仲間たちの緊張を解きほぐしていくように見えた。森の木々の間を吹き抜ける風が、彼らの頬を優しく撫でる。 ジェレミーはノクスとシャドウパピーズの圧倒的な威圧感に圧倒されながらも、なんとか気持ちを奮い立たせるように自分自身に言い聞かせるような声で呟いた。彼の声はまだかすかに震えているが、その中には前向きな姿勢が感じられる。「ま、まあ……仲間ということであれば……心強いですかね。」 その言葉には怯えが滲んでいたものの、彼自身の中で必死にポジティブな面を探そうとしている様子が感じられる。彼の表情には、葛藤と、そしてわずかな希望が浮かんでいた。 続けて、フィオもジェレミーの言葉に共感するかのように頷きながら震える声で答
その間もレティアはニコニコと笑顔を浮かべ、まるで自分の力をひけらかすこともなく当たり前のように話していた。だが、その使役獣たちがすでに討伐を進めているという状況に、フィオは少し唖然とした様子でため息を漏らした。「もう……ほんとレティーちゃんって……いろんな意味で手に負えないわね♪」「さすが、全職業の適性をもっているレティア様らしいですね。」 嬉しそうに呟くジェレミー。彼の声には、レティアへの尊敬がにじみ出ていた。♢ノクスとシャドウパピーズ、影からの出現「そっかぁ。ジェレミーに紹介してないよね。ノクス、シャドウパピーズきてー。」 レティアが親しげな声で語りかけたその瞬間、彼女の影が揺れ動き始めた。影が膨らみ、そこから次々と飛び出してくる巨大な狼型の魔物と狼の最強種の群れ。その異様な光景に周囲の空気が一変した。森の鳥たちのさえずりが止み、静寂が訪れる。 最初に姿を現したのは、漆黒の毛並みに紫の模様を纏ったノクス。その巨大な体は地面に影を落とし、一帯に圧倒的な威圧感をもたらした。その毛並みは夜闇に溶け込むかのように深く、紫の模様が妖しく輝いている。銀色に輝く瞳が一行を鋭く射抜き、どんな隠れた敵も見逃さないという冷酷な輝きを宿していた。 剣のように鋭い牙が、わずかに覗き、その口元から漏れる低い唸り声は森全体に響き渡る。足元からは瘴気が揺らめきながら漂い、その触れた枝葉は瞬く間に枯れ果て、まるで生命そのものを奪われたかのようだった。枯れた葉が、カサカサと音を立てて地面に落ちる。 続いて現れたのは――ノクスが従えるシャドウパピーズの群れ。狼種の中でも最強とされるその存在は、ただ佇むだけで周囲に圧倒的な恐怖を植え付ける。彼らの存在が、森の空気を重くする。 金色の瞳が暗闇の中で鋭い光を放ち、獲物を捉える目つきには、容赦なき狩人の執念が宿る。漆黒の毛並みに包まれたその巨大な体は、大型犬すらはるかに凌駕し、一群となって動くたびに周囲の空気を震わせた。地面が、彼らの足音で微かに揺れる。 牙と爪の鋭さは、見る者に本能的な恐怖を刻み込む。唸り声
翌日、彼の同行によって、レティアを中心とした討伐計画は、ギルド全体の合意を得て進む方向へと向かっていた。ジェレミーの献身的な姿勢と能力の回復が、ギルド内での信頼をさらに高めたことは言うまでもなかった。 一方、レティア自身はジェレミーの情熱を「一緒に楽しむ仲間」として受け止め、無邪気な笑顔を浮かべていた。彼女の心の中には、ただ純粋な冒険への期待だけがあった。♢リーダーの困惑と森への出発 翌朝、ルーシーは報告を受け、眉をひそめながら困惑した様子で声を上げた。彼女の顔には、寝不足と不満が入り混じっていた。「……え? なに? わたしが休んでる間に……もお、まあ……べつに良いけどさ、リーダー……わたしよ?」 その問いかけに対して、レティアはニコニコと笑いながら軽い調子で答えた。その笑顔は、何の悪気も感じさせない。「だってだってぇ……お菓子美味しいんだもんっ♪」 まさかの返答に、ルーシーは力を抜けたようにため息をつき、なんとか気持ちを切り替えるように呟いた。彼女の肩が、わずかに落ちる。「あ……あぁ……うん。そうだね。そこなんだね。はぁ……。じゃあ……森に行って魔物を討伐して、ジェレミーさんの意見も聞いてみようかな。それと、お菓子……わたしも食べたかったなぁ……。」 その言葉にレティアは嬉しそうに目を輝かせたが、ルーシーの視線には鋭い真剣さが宿っていた。彼女の瞳は、これからの任務を見据えている。 のびのびとなっていた森に、強い魔物が増えてきているという件。毎回、レティアが問題を起こし、報告も情報収集も出来ていなかった。ギルドの懸念が、ルーシーの表情に表れていた。 ジェレミーと合流し、いよいよ森へ向けて出発する一行。だがその空気は、魔物討伐の緊張感よりもどこか緩やかで賑やかなものだった。
その説明を聞いたレティアは目を丸くし、ついに実感が湧いたような表情を浮かべた。彼女の瞳は驚きで大きく見開かれている。「え? なにそれ……わたし、お金持ちじゃーん。」 彼女は嬉しそうに笑いながらさらに続けた。その笑顔は、純粋な喜びに満ちている。「その数、わかんないけど……いっぱいだよね、すごくいっぱいな気がするぅ!」 フィオはその言葉に合わせるように微笑みながら、分かりやすい例を挙げた。彼女の声は優しく、レティアが理解しやすいように工夫されていた。「あ、レティーちゃんには、その例え分かりやすいかもね。お菓子何個分換算! 大体、銀貨1枚くらいだもんね。それに紅茶付きだし……雰囲気も豪華で貸切状態って最高だよね。」 レティアはその説明にさらに興奮しながら笑い、心配していた気持ちがすっかり晴れている様子だった。甘いデザートと楽しい仲間たちが、彼女の心をさらに軽やかにしていた。彼女の周りには、幸せな空気が漂っている。 ♢体型への懸念と新たな討伐計画 レティアが楽しそうな表情を浮かべながら呟いた。彼女の視線は、目の前のデザートから離れない。「わたし、毎日通っちゃうかも……」 その言葉を聞いたフィオは残念そうな顔をして、レティアの体をちらりと見つめながら言葉を返した。彼女の目には、少しの心配がにじんでいる。「それ、太っちゃうよ……可愛い体型がぁ……。」 レティアは驚いた顔をしてフィオを見つめる。彼女の眉は上がり、純粋な驚きが表情に現れていた。「え? そうなのぉ?」 フィオはキッパリと断言する。その声には、一切の迷いがない。「そりゃ……甘いものを食べて動かなきゃ太るね。」 ジェレミーも微笑みながら優しく言葉を添えた。彼の表情は穏やかで、フィオの意見を裏付けているようだった。「はい。太りますね……。ですから私も、訓練後のご褒美として食べると言ったのですよ。」 その言葉を聞いたレティアは、突然思いついたように笑顔で声を上げた。彼女の瞳は、新しいアイデアに輝いている。「運
フィオも負けじとカウンターの前で悩みながら、ニコニコと笑って注文する。彼女の指先が、ショーケースのガラスを優しくなぞる。「わたしは、チョコレートパフェにしようかな! 甘いのって元気が出るよねー♪」 一方でジェレミーは、ショーケースをじっと見つめて何を頼めばいいのか困っている様子だ。彼の眉は少し下がり、迷いの表情が浮かんでいた。それを見たレティアが明るい声で提案した。「ジェレミーはこれにしたら? このケーキ、すっごく美味しそうだよぅ!」 ジェレミーは微笑みながら頷いた。彼の顔には、レティアの提案への信頼がにじんでいる。「では、それにします。レティア様のおすすめなら間違いありません。」♢デザートの歓びと新たな希望 それぞれのデザートがテーブルに運ばれてきた。皿の上に置かれたデザートは、まるで宝石のように輝いている。レティアは目を輝かせながらイチゴのタルトにナイフを入れ、クリームとイチゴを一緒に口に運ぶ。その一口で、彼女の顔は至福の表情に変わった。「ん~っ! 甘酸っぱくて美味しい~♪ ゼリーもプルプルしてるよぅ~!」 フィオはチョコレートパフェをスプーンですくいながら嬉しそうに笑う。スプーンの先からは、冷たいチョコアイスの香りが漂ってくる。「すごーい濃厚! チョコとクリームが絶妙だねぇ♪ あ、クッキーもサクサクしてて美味しい!」 ジェレミーは勧められたケーキをフォークで丁寧にすくい、一口食べた瞬間、驚いたように目を見開いた。その柔らかな舌触りと上品な甘さに、彼の表情は感動に包まれていく。彼の口元からは、小さな感嘆の声が漏れた。「おお……これは柔らかく、甘さがちょうど良いですね。久しぶりに、こんなに美味しいものをいただきました。」 彼はしばらくの間、ケーキの味わいに浸りながら、感慨深げに続けた。彼の瞳には、遠い過去の記憶が映し出されているかのようだった。「失われた身体の自由が、こうして少しずつ戻ってきていることを実感できます。次回もこれを……また頼みたいと思っています。体も自由に